2025年6月12日に起こったAI 171便の大惨事。
まずは、被害を受けた当事者の親族や関係者の方々へお悔やみ申し上げます。
恐らく今回の事故で、エアインディアってやばい航空会社じゃないか、と不安になる可能性が高くなると思います。
個人的な経験上、結論から申すと安全性に関しては心配する事は無さそうですが、機内のメンテは別問題です。
今回の事故は離陸後にエンジンが2つとも停止しまったために墜落してしまったと最新情報が流れていますが、まだ確定では無いためこの事故がパイロット要因であるか、そうで無いかに関しての判断は控えます。
エアインディアの事故は40年ぶり;パイロット要因は43年前が最後
犠牲者が出る事故としては、今回のAI 171便以前の事故は1985年へ遡ります。
AI 182便はカナダのモントリオールを出発し、ロンドンへ向かう途中の大西洋上空で仕掛けられた爆弾によりボーイング747-200機が大破しました。
テロ事件でした。
ヒューマンエラーによる事故は、1982年に悪天候の中でムンバイ空港への着陸が失敗したAI 403便の事例。
こちらはクアラルンプールを出発したボーイング707機による運航で、乗客・乗務員合計111人中17人が生存者として救出されています。
エアインディアと言えば何となく「やばい」印象がありますが、実は事故数や犠牲者数で歴史を振り返ると航空業界の中でも比較的少なく、まだJALの方が多いです。
※エアインディアの子会社であるエアインディア・エキスプレスに関しては、ボーイング737-800機が2010年と2020年に死者を発生する滑走路のオーバーラン事故を起こし、両方ともパイロット要因だとされています。
2022年に民営化:マイナスブランドイメージ払拭に努力?
長らく、国営であったエアインディアは負債額が膨張し続け、2021年時点でなんと6,000億ルピー、日本円で1兆円にまで膨らむ。
この背景にはもともと遅延の多さや社内腐敗によってブランド力がかなり低下していてインド人でさえ避ける航空会社になっていた事が大きな要因でもあります。
ここで、インドの大手財閥で、あのイギリスの車両メーカー、ジャガーも傘下に置いたタタグループが買収を決定。
民営化後にエアインディアに乗った時は、見違える程乗務員の対応が良くなり、以前の様な典型的な上から目線の態度が多いクルーから一変しました。
また、定時率も大分改善されました。

老朽化の問題は改善されていないのでブランドイメージも向上しない
さて、ソフト面では改善が明確になったエアインディアですが、生憎ハード面ではまだ古い機材が多く(特に長距離用機材)、あまり変化が見れていない様です。
古いと言っても10年経過するだけでかなりオンボロになってしまうので、機内メンテに力を入れていない事が問題でしょう。
近年新しい機材の導入を発表しましたが、2025年6月時点で一機も運航しておらず、辛うじてアエロフロートから買い取ったエアバスA350-900機と、デルタ航空とエティハド航空から中古で購入したボーイング777機が長距離で活躍するぐらい。
老朽化の一例としては、ビジネスクラスでもリクライニングが故障したり、肘掛けからテーブルが出てこなかったりする事例が報告されています。
エコノミークラスであればシートテレビや充電設備が壊れている、リモートが反応しないなどは珍しく無いかもしれません。

2024年に旧ビスタラ航空と統合;こちらの機材の方が新しい
ビスタラ航空は2013年にタタ・グループとシンガポール航空資本によって設立されたインドの航空会社であり、質の高さには「流石シンガポール航空資本!」という事が伺えました。
設立当時は全機種ほやほやの新型機材を導入。
ある意味、当時の国営エアインディアとは超対照的(笑)。
エアインディアを買収した同じ財閥グループという事で、この2社は2024年に統合。
コロナ禍の2021年、旧ビスタラ航空はデリー⇄羽田の定期便を運行させましたが生憎すぐに運休に。
こちらの方が、機内のメンテがしっかりされている印象です。

以下、これからエアインディアを検討されている方へのアドバイスです。
アドバイス①:エコノミークラスの場合は他社より価格が安ければ価値あり
現在、日本便ではデリー⇄羽田が唯一のエアインディアが運行する路線ですが、仕様機材の787-8は結構老朽化が進んでいる可能性はある。
そのため、テレビ画面やUSB電源がしっかり稼働するかは期待しない方が良いです。
その分、シートピッチは業界水準の31インチより若干広めの33インチで広いし、機内食のインドカレーはなかなか。
33インチがどれだけ広いかは、以前写真で解説しているのでこちらを参考下さい。

アドバイス②:新型機材が導入されるまでビジネスクラスは避けた方が良いかもしれない
ロンドン線に投入されているアエロフロート内装のA350機はまだ個室型のドア付きでビジネスクラスとしてはかなり豪華ですが(JALA350-1000の座席と遜色無し)、もし777の一部や羽田線に導入されている787-8であれば避けた方が無難かもしれません。

アドバイス③:できるだけ旧ビスタラ航空の機材を選ぼう!
生憎羽田便では現時点では従来のエアインディア機材である787-8による運行ですが、もし他の路線で同社を乗る機会があれば、機材に注目してみましょう。
従来のエアインディア機材は、インド国内線や近距離路線に導入されているA320neo機以外は、かなり年季が入っています。
北米等の長距離路線には他社から導入された機材が活躍していますが日本在住の方があまり利用する機会は少ないかもしれません。
そして、ヨーロッパやアジア路線の一部で活躍する旧ビスタラ航空のA321neoと787-9はアタリ機材です。
特にビジネスクラスであれば、これら2種類はフルフラットになるし快適。
従来のエアインディア機材 | A319、A320、A320neo、A321、787-8、777-200/300ER |
他社から導入した機材 | A350-900(旧アエロフロート)、777-300ER(旧エティハド航空)、777-200LR(旧デルタ航空) |
旧ビスタラ航空機材 | A320、A321neo、787-9 |
例えば、787-9のビジネスクラスはシンガポール航空のA350/787-10機材に導入されているシートと同型タイプです。

まとめ:老朽化と安全性は別問題
筆者は旧ビスタラ航空・旧インディアンエアラインズを含めて計62回エアインディアに搭乗しましたが、一度も「怖い」と感じた事はありませんでした。確かに機内サービスや清潔感は他社と比較すると劣る部分はありましたが、長年大きな事故を起こしていなかったし、パイロットは優秀なイメージです。問題なのは、機内や座席のメンテナンス。今回の事故と直結するかまだ結論づけられませんが、従来の機材の機内メンテが改善する事を願います。