カトマンズ→アブダビのフライトを十分に満喫した後は今回の一時帰国最大のハイライトでもあるファーストクラスへのアップグレード入札に成功したアブダビ→成田区間。人生初めての長距離ファーストクラスです。
この記事<その1>には先に機内での体験談を語り、<その2>に入札式アップグレードについて説明します。
アブダビ→成田のフライトはスケジュール上10時間15分。実際の飛行時間は約9時間半です。このフライトはアブダビ出発後、パキスタン上空を通過し、世界の尾根でもあるカラコルム山脈の上空を飛行します。
その後、中国領に入り、タクラマカン砂漠を通り、北京、ソウル、長野、そして成田に到着します。帰りの成田→アブダビは全く違うルートで飛行し、ミャンマーや中央インドを通るルートです。こちらは帰りのフライトのレポートで案内します。
フライトはアブダビを22:05出発予定で、成田の到着予定時刻は翌日の13:20です。
今回の機材はA340-500。新型機材を多く導入しているエティハド航空としては、結構古い機材です。このA340-500は長距離路線用であり、一時は色々な航空会社が運行していましたが、燃料を食うので不人気でした。
かつてはシンガポール航空が世界最長のフライトであるシンガポール⇔ニューヨーク間の18時間以上のノンストップ直行便としてこの機種を飛ばしていましたが、今は手放されました。タイ国際航空も同じくバンコク⇔ニューヨーク・ロサンゼルス間を運行していましたが、こちらも手放すことに。今では、貴重な機材です。
機体番号はA6-EHD。初飛行は2006年10月31日と約9年前にできた機体です。
<離陸前>
まずは自分の座席2Kへ着席。完全なプライベートシートです。ドアを開け閉めする事もできます。シートアレンジは1×2×1で真ん中の2席はカップルにお勧めです。もし見知らぬ人が隣り合わせになってしまった場合、座席の間の仕切りを持ち上げる事ができます。
A340-500機にはファーストクラスは横4席×3列の計12席あります。このフライトは空いていました。僕の他に、アラブ人の夫婦が3列目の真ん中の2席に座っているだけでした。キャビン全体がほぼプライベート空間です。
キャビンには棚の上の荷物入れが無く、荷物は前方のオットマンの下に収納します。そのため、開放的で広々と感じます。
ファーストクラスは3人の乗務員が担当していました。フィリピン人女性のキャビンマネージャー、フランス人女性のフライトアテンダント、そしてオーストラリア人男性のファーストクラス専属シェフです。エティハド航空の長距離路線のファーストクラスには必ずシェフが常務しており、客の好みの料理を調理してくれます。
エティハドのファーストクラスのシートは、イタリアの本革製であのフェラーリの車に使われている座席と同じメーカーのポルトローナ・フラウが製造しているとの事です。
個室には23インチの大型シートテレビとミニバー(冷えていないので、あまり意味がないですが)や小物入れ、開け閉めできるクローゼットもあります。至る所に照明もあり、シート前方のテレビの下や枕元、テーブルだけを照らす明かりやリーディングライト等、便利です。
着席するとすぐにオーストラリア人のシェフが挨拶に来てウェルカムドリンクのチョイスを聞かれました。ミモザをお願いし、その後、フランス人の女性クルーがウェルカムドリンクが載ったトレイを席まで運んで来てくれました。
トレイの上には、ウェルカムドリンク、ウェルカムレター、おしぼり、そしてデーツ(ナツメヤシの実)の入った小皿がありました。ミモザに使われているシャンパンはChampagne Bollinger La Grade Annee 2005, France。さすがにファーストクラスになるとボリンジャー!
そして、愛想の良いシェフがアラビックコーヒー(カルダモンの入ったアラブ風コーヒー)を持ってきてくれました。
<離陸後>
キャビンの照明がブルーになりました。なんかカラオケボックスにいるみたい(笑)。すぐに、離陸後のおつまみとドリンクから始まりました。
<ドリンク・食事メニュー>
ファーストクラスのドリンク・食事メニューはとても分厚く紙の材質も立派です。ページ数が多く、何を頼もうか迷います(笑)。レストラン並みです。以下、メニューの内容です。メニューの内容を読まれたい場合には右クリックで新しいページを開き、ズームして拝見下さい。
○ドリンクメニュー
○食事メニュー
<おつまみと夕食>
離陸後、すぐにおつまみとドリンクのサービスから始まりました。ドリンクは、ロゼのChampagne Duval Leroy Rose, France, NVを選びました。そしておつまみ。ナッツの他に、野菜のチップスとオリーブの盛り合わせがやって参りました。もうこれだけで腹いっぱいになるって。。。
そして夕食スタート。
その前に、エティハド航空のファーストクラスのメニューに付いてです。日本線では日本食(懐石料理)はお勧めでは無いと思います。他のエティハド航空のファーストクラスに搭乗されたブログ記事を見ますと、内容がビジネスクラスとほぼ一緒でファーストクラスだと一品の小鉢が追加されたぐらいかと思われます(和朝食がそうでした)。
ビジネスクラスには無いファーストクラス特有のチョイスはグリルメニュー。シェフがお好みの焼き加減等を聞いてくれ、付け合わせ等も選べるので是非エティハドのファーストではグリルメニューをお勧めします(もしくは、アラブ料理の炊き込みご飯、ビリヤニも結構美味しいらしいです)。
まずはテーブルのセットアップから。
ここでビジネスクラスとファーストクラスの違いが分かります。通常ビジネスクラスでは料理品が並んだトレイがまるごとテーブルに置かれますが、ファーストクラスではクルーが丁寧に食器を一つ一つセットアップしてくれます。今回は美人のフランス人のクルーがほぼ付きっきりでサービスしてくれました。
まずは、メニューに記載されていない突き出し(アミューズ・ブーシュ)から始まりました。丁寧に説明してもらいましたが覚えてない(泣)。確かコッテージチーズの何かでしたが、とても美味しかったです。パンは3種類が盛り付けられていましたが、腹いっぱいにならない様にこちらはパスさせてもらいました。
スープはオリエンタル風辛酢スープ、前菜は四川風スモークサーモンを選択しました。四川風スモークはサーモンがサラダの中に埋もれていますが、非常に美味でした。オリエンタル風辛酢スープは野菜の味がしっかりして丁度良い辛さと酸っぱさでとても美味しかったです。
その後はメニューに無いお口直しのマンゴー・シャーベットが出て来ました。かなり本格的なフルコースです。
メインはエティハド航空自慢のグリルを選びました。
このグリルもチョイスがとても豊富で、お好みの肉(チキン、牛肉、もしくはラム)や魚から選択し、付け合わせの野菜やポテト、ライス等を選びます。ソースも4種類用意。
僕は牧草飼育牛のテンダーロインに蒸し野菜、クリーミーマッシュポテトを選びました。ソースはシェフお勧めの仔牛肉のジュとマスタードのミックス。焼き加減はミディアムでお願いしましたが、実際やってきたのはウェルダンに近かったです。でも、美味しく頂きました。
辛口系シラーズの赤ワインと一緒にお願いしました:Shiraz, MSV, ‘Gomersal Vineyard’ Barossa Valley, Australia, 2008。
メインの次のチーズコースは満腹のためパスしました。
デザートは3種類のミニデザート盛り合わせを注文。オレンジフィナンシェ、ピスタチオムース、ハニーナッツケーキが並び、どれも美味しく頂きました。そして食後にはモロッコ風ミントティーを頼みました。ポットで来て付け合わせにバクラバ(しっとりした中東系のナッツのお菓子)、フレッシュミント、そして角砂糖が付きました。美しいプレゼンです。
ところで、エティハド航空のファーストクラスに使用されている食器がかなりお洒落だったので、どこのブランドか確かめてみました。よく見ると、Made in Japanじゃないですか!1908年創立のニッコーいう会社が製造し、石川県に本社があるそうです。
<夕食後>
この時点でパキスタン上空でした。そろそろ眠たいので、フランス人のクルーにベッドメーキングをしてもらいました。英語で機内のベッドメーキングサービスの事をTurn down service(ターンダウンサービス)と呼びます。ファーストクラスでは一般的です。その間、トイレ等に移動し、もらったラウンジウェア等に着替える事ができます。僕はとりあえずトイレへ写真を撮影に行きました。
シートに戻ると、シートでは無く、完璧なベッドに変わっていました。ちゃんと寝具用の枕まで用意され、ベッドシーツの上には薄い掛布団も用意されていました(機内は寒くないので薄い方が蒸れなくて良いです)。
個室になった「お部屋」は極楽です。機内で完全プライベート状態。まだパジャマに着替えていないのベッドの上で履き替えました。
<深夜のカラコルム山脈上空>
月がとても明るく、深夜にも関わらず、世界の尾根でもあるカラコルム山脈がかすかに見えました。とても幻想的です。月明かりだけを頼りにして撮影しているのでかなり画像は悪いですが、山脈の氷河や山の形がしっかり判りました。
この辺りは7,000~8,000メートル級の山々が並びます。そして、現地時間真夜中2時頃、人生で初めて世界で2番目に高い山、K2を見る事ができました(推定)。
後ほどK2をトレッキングした事のあるパキスタン人の友人に写真を確認してもらったら、これはK2だと言ってくれました。写真の方が肉眼よりくっきり写っています(笑)。
窓のブラインドを下ろし、この後、ぐっすり3時間程熟睡しました。興奮していなければ、たぶん日本到着間際までぎりぎり寝ていたと思います(笑)。
<朝>
起きた時にはタクラマカン砂漠の上空でした。丁度チベット高原が始まるあたりです。眼下は砂漠でした。
<朝食>
北京を過ぎたあたりで、とてもサービスの良いフランス人クルーから朝食の選択を聞かれました。
先ほどのメニューを参考に、朝食は折角シェフがいて機内で調理してくれるとの事なので、「フレッシュオーガニックの玉子料理をご注文に応じて」を選びました。 プレーン・オムレツと付け合わせのハッシュポテトとソーセージ、トマト、マッシュルームをお願いしました。
その他、クロワッサンとフルーツの盛り合わせも一緒に。飲み物はオレンジジュースとエスプレッソを。ちなみに、コーヒー類はネスプレッソだそうです。
相変わらず、素敵なテーブルのセットアップから始まって、頼んでもいないトーストやデニッシュもやって来ました。トーストはちゃんとトーストホルダーに。食べきれないよ(泣)。
ところが。。。オムレツは水分が全くなくぱさぱさしていました。あれ、これちょっと期待外れ。申し訳ないですが、半分以上残させてもらいました。
代わりに、もう一品すごく興味を引いたメニューがあったので、そちらも少量でお願いしました。そのメニューとは「海老と卵麺入りワンタンスープと海老のトースト揚げ」。
ちなみに、「日本海(Sea of Japan)」とフライトマップに記載された航空便を以前韓国へ運行させないという運動があり、多くの航空会社がやむ負えなくフライトマップからSea of Japan表記を消しました。エティハドのフライトマップからも消えていました。飛行機の旅にも政治を感じさせられます。ちなみに、タイ国際航空は韓国の圧力により、「東海(East Sea)」へ記載を変更しています。
機内食にもどって。
そうだ、エティハドのファーストクラスと言えば、ジョニーウォーカーのブルーラベルが提供されるので、到着前にロックで頂きました。初ブルーラベルですが、正直、他のウィスキーとの違いがあまり判りませんでした。ブラックラベルと何が違うのでしょうか!?
そして追加注文の料理が出てきました。
スープでも卵麺でもありませんでしたが、海老ワンタンはジューシーで海老のトースト揚げも揚げたての様でカリッとしていました。付け合わせの米の麺が少々こちらもぱさついていましたが、オムレツよりは良かったです。タレは唐辛子をつぶしただけの様な辛いソースだったので、もう少し甘味や酸味があればさらに美味しく頂けました。要望に応じてもらい感謝です。
到着寸前に、記念撮影をお願いしました。朝食のメイン2品目が終わった時には既にシートベルト着用サインが点灯していたので、ちょっと頼みずらかったですが、笑顔で了承してくれました。
しつこい写真撮影にも嫌な顔一つせず、本当に丁寧に対応頂きました。
こちらも皆さんとても感じが良かったです。
<フライトの感想>
帰りの成田→アブダビ間がビジネスクラスなので、こちらのレポート終了後にファーストクラスとビジネスクラスの体験を比較して詳しく語りたいと思いますが、簡単に纏めるととても思い出に残る旅でした。2回目の機内食では少々残念な部分もありましたが、どのクルーもとても愛想が良くすべてのリクエストに文句なしに応じてくれ、サービスには大満足です。
エティハド航空のファーストクラスは世界最大のエアラインサービスのリサーチ会社、スカイトラックスより、2010年から4年連続で世界のベストファーストクラスに受賞されています。特に2013年では、「ベストファーストクラス」、「ベストファーストクラス・シート」、「ベストファーストクラスの機内食」の3部門すべてトップで受賞しました。
エティハド航空は世界各国のクルーを採用し、とてもインターナショナルな雰囲気です。豊富な石油資源で設備も豪華に投資ができ、かつ他社と比べると安価なので人気があり、現在は勢いをつけながら毎年就航都市をどんどん増やしています。
お隣のライバル、ドバイの航空会社エミレーツに対抗しながら、アブダビのエティハドは頑張っているのがよく分かります。
※2015年6月追記:2015年もスカイトラックスより世界のベストファーストクラスとベストファーストクラス機内食を1位で受賞しました。