JALマイレージバンク(JMB)とANAマイレージクラブ(AMC)の両社はプログラムの仕組みが結構対照的ですが、仮の結論から言うとAMCの方が遥かに優れものです。
この記事では国際線特典航空券だけに焦点を置いて7つの違いを比較してみましょう。
違い①:自社特典航空券の際はAMCの方がビジネスクラスの必要マイル数が低い傾向
エコノミーやプレエコでは特に両社で必要マイル数は大差がありませんが、ビジネスクラスとなると違いは明らかです。
例えば、自社便利用の際(JMBならJAL、AMCならANA)でホノルル行き、バンコク行き、パリ行きで検証してみましょう。
<ケーススタディーA:自社利用でホノルル行き比較>
JMBであれば片道あたりエコノミー20,000マイル、プレエコ30,000マイル、ビジネス40,000マイル。
AMCの場合、シーズン別に分かれていますが、それぞれそこまで大差は無い。
レギュラーシーズンで比較するとして:
エコノミー20,000マイル、プレエコ29,000マイル、ビジネス32,500マイル(すべて片道換算)。
エコノミーやプレエコは一緒かほぼ一緒ですが、ビジネスクラスはAMCの方が低い設定です。
<ケーススタディーB:自社利用でバンコク行き比較>
こちらも、エコノミーとプレエコは両社とも類似。場合によってはJMBの方が安い場合も。
ビジネスクラスとなると、やはり大きな違いが。JALは片道40,000マイルですが、ANAは片道換算で27,500〜31,500マイルの範囲内。
<ケーススタディーC:自社利用でパリ行き比較>
説明は要りません。
ビジネスクラスに関してはJALは片道55,000マイルに対して、ANAは片道換算で40,000〜47,500マイルの範囲内。こちらもエコノミー・プレエコは大差ないけど、ビジネスはやはり後者の方が低い設定。
違い②:提携航空会社の数がAMCの方が圧倒的に豊富
世界最大の航空会社アライアンスだけあり、スターアライアンスに属するANAは最強です。
スタアラ以外にも個別の提携先があり、両方合わせるとその数はワンワールド系であるJMBの22社と比較すると38社ととても豊富。
提携航空会社 | JMB | AMC |
アライアンス内 | 13社 | 25社 |
アライアンス外 | 9社 | 13社 |
合計 | 22社 | 38社 |
AMC提携先のリストにあるジェットエアウェイズは長らく経営破綻していますが(汗)。
違い③:提携航空会社特典航空券になると更にAMCの方が低いマイル設定
提携会社特典航空券では、ビジネスクラスだけでなくエコノミーもAMCの方が低いマイル設定になり、違いはもっと明確になります。
また、必要マイルの算出方法が異なり、JMBは距離に基づいて必要マイルが算出されているのに対し、AMCは地域ブロックに分けた一律のゾーンベース。
<ケーススタディーD:提携会社利用でムンバイ行き比較>
まずはインドのムンバイを参考例に挙げてみましょう。
東京→ムンバイの直線距離は片道約4,200マイル。
提携会社の直行便は無いので、ワンワールド系航空会社のキャセイで行く香港経由か、マレーシア航空で行くクアラルンプールで想定にすると、経由地点が計算に含まれるため距離はオーバーしますがそれでも区切りとなる6,000マイル以下。
なので、4,000 – 6,000マイルの必要マイル数を確認します。
まずはJMBのエコノミーとビジネスの早見表。
エコノミーは片道37,000マイル(往復74,000マイル)。
ビジネスクラスだと片道60,000マイル(往復120,000マイル)。
次はAMCを確認。
もう少し分かり易い様に表でまとめてみましょう。
東京⇄ムンバイ | JMB | AMC |
エコノミー(往復) | 74,000 | 35,000 |
ビジネス(往復) | 120,000 | 60,000 |
これは結構な差がある。
エコノミーとビジネスクラス共に2倍の開きが確認できます・・・
ただ、AMCはゾーン制なので、同じゾーン内で最も日本に近いベトナムのハノイを参考にしてみましょう。ムンバイとハノイでは2倍弱も距離が違いますからね。
※gcmap.comにて作成
<ケーススタディーE:提携会社利用でハノイ行き比較>
東京⇄ハノイは片道約2,300マイル。
JMBは2,000〜4,000マイル範囲内で算出します。
東京⇄ハノイ | JMB | AMC |
エコノミー(往復) | 46,000 | 35,000 |
ビジネス(往復) | 84,000 | 60,000 |
それでもやはりJMBの方が必要マイル数が多い!
違い④:AMCは様々な裏技を駆使できる!
これは上級者限定。AMCの本領発揮はこれからで様々な方法で凄い複雑なルートを限られたマイル内で作成する事が可能です。
例えば、東京⇄シンガポールの往復を手配するとしましょう。
ゾーン制で一律の設定なので、普通の単純往復も、以下の様な距離を稼ぐとんでもないルートも必要マイル数は一緒なのです。
航空ファン仲間K君が送ってくれた仮の参考日程。
あまり細かい事は記載しませんが、乗継や途中の経由地でストップオーバーが制限付きで可能なので、それを有効にさせた方法が上記の日程。
JMBでも不可能ではありませんが、似た様な日程を作成すると、合計移動距離制のためAMCと比較すると2倍かそれ以上のマイル数が必要になります。しかも、提携会社数が限られるのでAMCの様にバラエティー豊かなエアラインを日程に含める事ができないし。
ここだけの秘密話(って、公にしているので意図に反していますが)。
このゾーン判定がかなり大胆。特に、「Zone 8」に属する中東・アフリカはなんとすべて一括!
もの凄く広大なエリアなので、この地域内を端から端まで移動するとかなりの長距離になります。
そして、この地域内のみの旅程だと、なんと往復ビジネスクラスがたったの55,000マイルで済むのです。
片道換算だと27,500マイル。
適当に遊んでみたルートがこれ。
ドバイ→カイロ→ヨハネスブルグ(経由)→ケープタウン→アディスアベバ(経由)→ドバイ。
※gcmap.comで作成
総移動距離は約11,000マイル。東京からヨーロッパを往復する距離です!
このゾーン設定最強だー。
エジプト航空のカイロ→ヨハネスブルグ便は東京→ホノルル路線とほぼ同じ距離。
この様に、AMCはとてもディープです。
違い⑤:提携会社の特典航空券検索はAMCの方がサイトが使いやすい
ここまで来たらもうAMCの方が優秀な事は判断できますが、それを更に釘を刺すのが、サイトの使いやすさ。
AMCには提携航空会社の検索の際にカレンダー機能がありますが、JMBはこれが無い。
希望の日付に空席がない場合、AMCであれば前後3日間の空席情報を画面に同時に出すのでパッと見やすいのに対して、JMBであればいちいち検索画面に戻って毎回日付を入れ直さなければならないので若干不便。
では、JMBはオワコンかと言えば、そうでも無いです。
実際、これだけAMCが優れていても筆者の場合はJMBの方に優先的にマイルを貯めているので、僕のAMCマイル保有数は現在ゼロですw。
次はJMBの方が優れている点を紹介します。
違い⑥:JMBは片道発券が可能;AMCは不可
JMBの特典航空券は片道発券が可能です。AMCは2023年7月現時点では不可で往復発券のみ。
有償チケットと組み合わせて自由自在に日程を組みたい場合、片道発券はとても便利です。
この違いはかなりでかいです。
違い⑦:JMBの最強パートナーであるエミレーツ航空
近年、エミレーツの特典航空券は非常にハードルが高くなってしまいました。
エミレーツ自社のマイレージプログラムは大幅に近年改悪してしまったし、三大アライアンスに属していないのでなかなか特典航空券として発券できる手段が少ない。
有償チケットだと上級クラスはなかなかお得な運賃が無い。
そんな中、JALはエミレーツ自社よりももっと少ないマイル数で、ビジネスクラスの特典航空券を発券できる。しかも、燃油サーチャージ無しで。
詳細は過去の記事に取り上げています。
まとめ
AMCはとても奥が深いです。正直、一日中座って面白いルートを研究しても飽きません。飛行機旅行計画マニアの心を鷲掴みにします(笑)。ただし、AMCの唯一ネックな点は往復チケットのみ手配が可能な事。その点、JMBは必要マイル数が高くても片道発券ができるので便利ですね。
個人的には、スターアライアンス系の航空会社はアビアンカ航空やエアカナダの様にマイルを安価で購入して、そのまま特典航空券に換える手法が便利なので現時点ではAMCは活用していません。しかし、AMC特有の複雑ルートができるのはとても面白いので、マイルがもし貯まっていたら、たまらない快感を覚えるでしょう(笑)。
ではJALとANAどちらのマイルの方が便利?
その答えは上記のメリットとデメリットを精査して自分に合った方です。