今回の比較対象は主要ルートの一つである、羽田⇄新千歳です。
往路がJALファーストクラス。機材はA350。詳しい搭乗記はこちら>
復路がANAプレミアムクラス。機材は国際線仕様の787-8。詳しい搭乗記はこちら>
結論:JALファーストクラスの方が提供内容がはるかに充実
(にも関わらず、個人的にはANAの方が大変満足しました。後で説明します。)
内容を一つずつ、検証していきましょう。
<価格のお手頃感>
勝者:JAL
JALは価格破壊を起こしていると思います(笑)。どの区間も、当日空席さえあれば予約済みの普通席に一律8,000円でアップグレードが出来てしまうからです。空港のJALサクララウンジに入室するだけで3,000円するのに、その更に上をゆくダイヤモンドプレミアラウンジで美味しいウィスキーをハーゲンダッツと嗜む事ができ、そして機内では豪勢な機内食の他に幻の森伊蔵やシャンパンが飲み放題。それだけで、軽く元は取れてしまいます。座席が広い、やったー。マイルがもっと貯まる、やったー。だけの特典ではありません!
ただ、お手頃感があるだけに出発直前まで空席の多かったフライトでも、満席になってしまったのである意味プレミアム感はあまり無いかもしれません。
ANAはもう少し正常です(笑)。2021年12月時点の当日アップグレード価格は区間に応じ、例えば羽田⇄沖縄、福岡や新千歳は15,000円、羽田⇄伊丹は11,000円。どちらもJALより高価な上、JAL程豪華なものは提供していません。ただし、国際基準からすればそれが適正な価格設定ですし、利益を出すという観点からすればまともな商売だと思います。だからこそ、名前の通りプレミアムの価値が付いています。
<優先チェックイン・保安検査場>
勝者:引き分け
どちらも特別感のある専用の入口が用意されています。全国すべての空港に設置されている訳では無いので、あくまで一部主要空港のみとなります。専用の保安検査場が隣接され、その先はラウンジへ直結するので便利です。
<ラウンジ>
勝者:JAL
ここでかなりの差が両社でつけられます。JALのファーストクラス客は最上級会員用ラウンジである、ダイヤモンドプレミアラウンジが利用できるのに対し、ANAプレミアムクラス客は最上級会員ラウンジであるANAスイートラウンジが利用できず、一つ下のランクにあたるANAラウンジのみが入室可能。そしてこの2つのラウンジには提供内容にかなりの格差があります。
JALダイヤモンドプレミアラウンジ(羽田) | ANAラウンジ(新千歳) | |
食事 | パン2種類、特製カレーパン、おにぎり(1~2種類)、スープ2種類、ハーゲンダッツのアイスクリーム2種類、おつまみ | おつまみ以外無し(スイートラウンジはパン、おにぎり、スープ等あり) |
マッサージチェア | ○ | ×(スイートラウンジのみ) |
シャワールーム | ○(羽田のみ;アメニティーも充実) | ×(羽田のスイートラウンジのみ) |
唯一、ANAラウンジの方がポイントが高かったのは飲み物の種類。
JALダイヤモンドプレミアラウンジ(羽田) | ANAラウンジ(新千歳) | |
ソフトドリンク | 茶類各種、コーヒーサーバー、ソフトドリンクサーバーとトマトジュースのみ | 左の飲み物の他に、青汁、牛乳、カゴメ野菜ジュース |
アルコール | 生ビール4種類とキリン富士山麓ウィスキーのみ | 生ビール3種類とサントリー角ハイボールサーバー、焼酎2種類とウィスキー2種類 |
JALダイヤモンドプレミアラウンジのアルコール類はビール以外だとウィスキー1種類のみでしたがこれがまたそこそこのお値段がするウィスキーでした(市場価格で一本5,000円前後)。ANAスイートラウンジではどの様な銘柄があるのか、そして種類があるのか気になります。
ANAラウンジでは、おつまみ以外の食事が一切無いと言うのは寂しいですね。もしいつの日かANAプレミアムクラスの乗客がANAスイートラウンジ利用の対象になれば、ここで大分価値が上がります(実際ANAへフィードバックとしてこの事を提案しました)。
<優先搭乗>
勝者:JAL
こちらもラウンジと同様でJALファーストクラス客は最上級会員扱いとして一番最初に優先搭乗が可能。ANAプレミアムクラスは最上級(ダイヤモンド)会員が搭乗し終えた二番目の案内でプラチナ会員扱いです。
<座席>
勝者:引き分け(ただし国際線仕様787-8を含めればANA)
両社とも、シートピッチ(足元のスペース)は127cmと国際線のプレミアムエコノミーより若干広い程度です。普通席と比べれば広々としていますが、決してゆったりとしているとは言えません。2時間程度のフライトであれば十分かもしれません。
ただし、ANAでは国際線仕様機材で国際線ビジネスクラスを国内線プレミアムクラスとして開放しており、国際線仕様787-8(ANAホームページで予約時の機材コードは78M)の場合だとシートピッチが145cmとかなり足元がゆったりとします。この違いは国内線仕様だと通路側へ出る際に隣人の膝を跨がずにはいられませんが、後者であれば余裕があるのでその心配はありません(レッグレストを上げていない状態)。
JALも国際線仕様機材を国内線で導入していますが、何故か国際線ファーストクラスやビジネスクラスを国内線ファーストクラスとして開放しておらず、一つ下のクラスJとして販売しているので不思議ですね。フルフラットシートもあるのに。
シートピッチは以下の通り:
JAL | ANA | |
国内線仕様機材 | 127cm | 127cm |
国際線仕様機材 | ×(導入無し) | 145cm(787-8) 127cm(A320neo) |
<アメニティー>
勝者:JAL
両社ともスリッパとヘッドフォンは提供していますが、クッションと食事・飲み物メニューはJALのみ。クッションも、典型的なヒラヒラでは無く、硬さがある腰に優しいプレミアム感のクッションです(テンプール製)。
<機内食>
勝者:引き分け(ただし主要路線の昼食と夕食であればANA)
今回の比較で言うと、ANAの方がボリュームもあり、熱々の主菜が提供され、プレゼンも凝って美味しく頂きました。ただ、ANAの機内食は時間帯と路線によってばらつきがあります。
基本的に朝食と軽食は量が少なく、温かい料理がありません。昼食と夕食は、路線によって温かい食事が提供されます。その中でも、JALファーストクラスと対抗する様な主要路線であれば、温かい主菜のプレートが付きます。
僕の利用した時間はちょうど17:00発で夕食が提供されるフライトで、しかも主要路線であったので一番「豪華」な機内食になりました。
他の時間帯や区間になると下記の様にスタイルが結構異なります。
↑の写真、右上から時計回りに:
○羽田⇄新千歳・福岡・那覇間の昼食・夕食一例
○その他ルートの昼食・夕食一例
○軽食一例
○朝食一例
詳しいメニューはANAのホームページで確認が可能です。便によっては期待はずれかもしれないので、利用前に一度確認される事をお勧めします。
JALも美味しいのですが、温かい食事のはずが結構冷めているんですよね(これは国際線でも思う)。味付け自体は良いです。量はそこそこですが、希望であれば別途JALオリジナルカップ麺を頼む事ができるのでこれはとても評価できるポイントです(短い羽田⇄伊丹線を除く)。
ANAと大きく異なる点としては、路線関係無く、提供される内容に安定感がある事。朝、昼、夕全て同じスタイルで提供され、温かい主菜が付きます。
JALもホームページで写真付きで機内食のメニューが表示されているので、何が提供されるか一目瞭然です。
<飲み物>
勝者:JAL
短距離路線としては両社ともかなり充実していると思いますが、JALの方が高価な酒や凝っている飲み物を提供している印象です。一例として(現時点の公式ネットショップでの販売価格;もちろん機内では無料です):
JAL | ANA | |
ソフトドリンク | ・トマトジュース岳人(180ml;400円) ・奥会津金山の天然炭酸水(350ml;150円) ・JALオリジナルドリンク「スカイタイムももとぶどう」 |
・ペリエ ・アイスコーヒー ・抹茶入り静岡茶 |
アルコール | ・焼酎森伊蔵(1,800ml;20,000円前後※) ・十勝純米大吟醸(720ml;3,080円) ・<シャンパン>ピエール・ド・ブリNV(750ml;6,050円) |
・焼酎夕-SEKI-(1,800ml;2,300円) ・鳥海山純米大吟醸(1,800ml;3,300円) ・<シャンパン>ヴーヴ・オリヴィエ・ブリュット(750ml;5,500円前後※) |
※一般のネットショップで販売されている価格
JALは何と公式では抽選でしか購入できない幻の森伊蔵を機内で提供しています。その他も全体的にアルコール類は価格だけを指せばANAより豪華なもの、そしてソフトドリンクでさえ、プレミアムなトマトジュースを提供しています。
JALの残念なのが一点。こんな豪華なお酒をプラスチックカップで提供する事。ANAはしっかりグラスを用意してくれます。ここをコスト削減するのは非常に勿体ない気がする。。。正直そこまで酒の味に通でない自分にとっては、酒はグラスで飲まないと気分が出ません!
<おまけ:クルーの対応>
勝者:ANA
事前に言っておきます:これは参考になりません。こればかりは個人的な相性や、空席状況、その時のクルーの気分など、様々な要素が影響するからです。だから、これは「おまけ」としました。今回の搭乗に関して、JALさんからは比較的無関心で機械的な対応、ANAさんにはホスピタリティー溢れる対応を頂きました。そのため、そのお礼の一環として、ここにANAさんへ感謝の意を表したいと思います。詳しくは、搭乗記に記載しております。
まとめ
この比較の勝者はJALである事は間違いないのですが、どんなにハード面が素晴らしくても、クルーの対応によって「あれ?」となるとどうしてもそこで個人的な最終評価は決まってしまいます。ANAは提供する内容が劣っていたとしても、広々とした国際線仕様の座席に美味しい機内食や酒をグラスで提供される事、そしてクルーに飲み物のお代わりを勧められる等、基本のところがしっかりしていれば、豪華で無くても十分に満足ができる事を今回は学びました。おもてなしはサービスの柱です。
もしANAが今後プレミアムクラス乗客をラウンジ利用に際して最上級会員と同じ待遇を提供する事になれば、そこで初めてJALと同じ土俵で比較ができるでしょう。
ちなみに、JALとANAの比較は2017年の国際線ファーストクラス、2018-2019年の国際線ビジネスクラスでも記事にしていますのでご参考下さい。