「Tipping culture is getting out of hand」
訳:チップ文化が手に負えなくなってきている、と多くの現代アメリカ人は口を揃えます。
本来は、サービスが良かったら追加で支払うはずであったシステムが、いつの間にか良かろうが悪かろうが半強制的になってきている上に、チップ相場の%も年々増加傾向です。
今では人的サービスが発生しないはずのコンビニでさえ支払い画面でチップの選択をしないと決済できないぐらいヤバい(笑)。
日本で育った人間にとって慣れにくいアメリカのチップ文化を理解するには、まず3つのシチュエーションと、その背景を理解する事が重要です。
その3つのシチュエーションとは:
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①チップが絶対(慣例的)に必要な場面 ②チップが期待される場面 ③チップが必要無い場面 |
それぞれ掘り下げていきましょう。
①チップが絶対(慣例的)に必要な場面
レストランのウェイター・ウェイトレスやバーテンダーです。
20年ぐらい前までは合計金額の10%がチップの相場でしたが、今では20%が基本になっています。
「普通のサービス」でこれぐらいです。
もし、サービスに不満があっても、最低10%は期待される様です。
(皆さん生活がかかっているので不満なサービスを受ける事は稀ですが、対応が不快と感じたらオーダーする前に店を出て行きましょう。)
30ドルの食事であれば、6ドルはチップとして期待されます。
バーでドリンクをお願いする場合、15ドルのカクテルを注文したら、3ドル追加でチップを支払う事になります。
でも、高すぎますよね・・・
これには訳があって・・・
<2025年でも全米多くの州で接客スタッフはタダ働き同然の賃金しかもらっていない>
外食産業のウェイター・ウェイトレスは多くの州で最低賃金の対象外となっています。
こちらは米国労働省が定めた、連邦レベルでの公正労働基準法に基づくチップ制の最低労働賃金。

なんと、時給たったの2.13ドルで、この数値は20年以上ずっと変わっていません。
円安時代の今でも、現在の換算レートで時給320円なので、日本より大幅に物価の高いアメリカではこれだけの賃金だけで生活をするのはもちろん不可能です。
一部の州では独自の基準を設けています。
例えばカリフォルニア州ではチップ制の労働であっても、最低賃金が他の職種と同様に時給16.5ドル(約2,500円)なので、チップを追加すればそれなりの収入にはなります(が、同州はアメリカで最も生活費が高い事でも有名です)。
<州で基準賃金のばらつきがあってもチップの相場は全米一律>
外食接客業にもしっかり他の職種と同じ最低賃金システムを導入しているのであればチップはいらないだろう!と疑問に思いますが、そこはどんぶり勘定ですね。
どこの州でも20%のチップは期待されます。
この最低水準の時給2.13ドルはテキサス州を始め南部の州が多く、フロリダ州で9.98ドル、ハワイ州で12.75ドル、ニューヨーク州で15.5ドルと州によってかなりばらつきはあります。
<チップ制度の良さ:自由自在がある程度効く>
レストランでは各テーブルに専属のウェイター・ウェイトレスが担当します。
日本や他国だと注文する時以外に用がなければ、スタッフがアプローチする事はありません。
アメリカの場合はより多くのチップを稼ぐために、サービスに気を配る傾向があるので頻繁にテーブルを訪れます。
こちらから何も言わなくても他に欲しいものを聞いてくれたり、食事に問題が無いか確認してくれます。
この様なレストランではメニューを臨機応変に対応できるケースが多いので、苦手なものを省いてもらったり、同じ料金体系であれば追加料金無しで他のアイテムに代替してもらう(例えばアスパラ苦手だからブロッコリーに変えてくれ、みたいな)リクエストに応じてくれる事も珍しくないです。
もし提供された食事に何か問題があった場合(期待していたのと違う、不味いなど、何かのミスがあった時)、食べ始めてすぐにスタッフに伝えればそれなりの対応はしてくれます。
クレーマーにならないためにもある程度の謙虚さは必要ですが(笑)。
<レストランでチップの支払い方>
キャッシュレスになったこの世の中、基本的にクレジットカード利用が一般的です。
その際、ウェイター・ウェイトレスに請求書(Bill)をお願いして、その後支払い方法を聞かれた時にカードと伝えると端末をテーブルまで持ってきてくれ、そこで決済します。
その時にチップ欄が表示されるので、希望する金額を客側で入力します。
スタッフはいくら入力したか分からないように画面はこちらを向いているので安心(?)です。

②チップが期待される場面
こちらは外食産業スタッフの様にタダ同然の賃金では無く、一応最低賃金の対象ではあるけど、チップの支払いが根付いている場面の紹介します。
これらは主に個人的なサービスを提供してくれる場合に多いです。
例えば、タクシー、無料送迎バス、フードデリバリー、散髪、スパ、バレーパーキング等。
彼ら・彼女らもチップ無しの収入だと生活面が厳しい事があり、どうしてもチップに頼らざるを得ない状況が一般的です。
相場は15%〜20%程。
現在の日本の物価から考えると、チップ前の価格だけでも高い!と思われがちですが、車完全社会のアメリカは生活費が今では日本の2〜3倍程かかる事を考えると理解しやすいかと思います。
シェアライドのウーバーなどはアプリからチップを払えるシステムになっており、金額を指定できます。
③チップが必要無い場面
コンビニや商店でのお買い物、ファーストフード店での食事、乗合バス、サービスチャージが含まれている場合。
最近では、街角のキオスクやコンビニでクレジットカード払いをする際、タブレットで金額確認が必須になるシステムが一般的になりましたが、その際にチップを指定しないとなんと画面の先へ進めません!
もちろん、サービスなんて受けていないので僕はいつも0%を選択です。
セルフレジで20%のチップ払う変態なんて居るのかな(笑)。
やばいぜアメリカ、どこまでもチップを求めるかー!

<サービスチャージが含まれている場合>
地元の人たちが利用するレストランではまず無いですが、外国人観光客が多く利用する店ではチップの文化に慣れていない人達向けに予めサービスチャージ(Service Charge)を含める場合があります。
この際、チップは必要ありません。
支払いをする前に、必ず請求書(Bill)の内容を確認しましょう。

まとめ
チップの習慣が過激になっている背景には、インフレ率だけが高くなって賃金の上昇が追いついていない現状が主な要因でしょう。
生活ができるレベルの賃金を支払わない社会システムがこの様な状況を発生させていますが、僕が他国の欠点を言う筋合いは無いのでここまで。
チップ制はアメリカ人でさえ結構うんざりしている人が多いですが、外食産業側もこれを変えないのはチップ制を保てた方が節税にもなるし、利権が絡んでいる可能性が高いですね。






