インド高額紙幣廃止:何かを犠牲にしないと改革はできない

僕は日本人である事に感謝をしています。日本は素晴らしい国だと思いますし、海外で「日本は良い国」と言ってくれると日本人に生まれて嬉しく思います。

でも。

今回は愚痴らせてください(笑)。

話題が絶えないこの急激な高額紙幣無効政策。「4時間後に」という首相の言葉は誰もがびっくりしました。

発表と同時に、フェイスブック上でインド在住の日本人のコメントに引っかかる事がありました。「狂っている」とか、「やる事はやっぱりインド人」とか、「俺の金はどうなるんだよ」ばかり。自分の生活範囲でしか判断ができない事にちょっと日本人の嫌なメンタリティーを見てしまった様な気がします。

半面、同じくフェイスブック上のインド人は大半がこの政策に付いては肯定的。これでやっと腐敗が無くなる!とか、テロの脅威が少なるとか、喜んでいるコメントが多く、逆にあまり批判的な意見を言えるような空気ではありません。

昨日行った銀行も混乱があるかと思いきや、意外に秩序あるし皆しっかり列を守って順番を待っている。銀行側のプロセスもスムーズ。銀行員も協力的(少なくてもICICI銀行では)。ネガティブというよりもポジティブな空気に包まれていた気がします(でも、ちょっと殺気だって叫んでいた客もいましたが、まぁ混雑するとありがちのパターン)。

しばらく経って、またフェイスブックで日本人のコメントを読むとこれまた「同僚のインド人が肯定的でびっくり!」とか、「こんなに面倒くさい事しなければいけないのにどうして冷静?」という投稿が。

今回、国民性を知る意味ですごく勉強になりました。インド人は自分よりも家族や国へ対しての愛情が強い。肯定的な人たちは今の自分の生活は一時的に辛くなるけど、これは長い目で見ると良い結果になる。と、未来志向が強いのが理解できます。

反対に多くの一般の日本人は身の回りの生活だけを重視し、社会や国を想う気持ちが薄いのでは。あまりに快適な生活スタイルに慣れてしまい、これが乱されるのが嫌だ、と。確かに日本はインドと違い、テロの脅威もあまり無いしとても平和な国です。政治的な腐敗も少なく、もともと社会基盤がしっかりしています。でも、大体どの日本人の方に話しても日本の将来は暗い、と聞きたくない事を口にされます。経済もバブル崩壊後からほぼ停滞している状況でもありますし、技術やITは進歩しても政界では首相がどんどん変わっていきますし(幸い安倍ちゃんは芯がありますが)あまり国としての発展は見えていません。もうずっとぬるま湯に浸かった状態。自分の上を行く社会や国への想いが薄くなったか。これでは、永久に日本の未来は明るくなる事は無いと思います。

インドに住んでいる日本人の方々も、今回の出来事は一時的に不便がありますが、お勤め先の会社にとっては利点が沢山あるはずです。例えば以前聞いた事があるのが、日系企業で少しでも儲かってきたり名前が知れてきたりすると、政府の役員がやってきて色々会計の事でイチャモンつけてきて大量の賄賂を要求される(この国ではいまだに規定が明確になっていない部分があるので、色々な解釈ができてしまうのです)。支払わないと操業停止にさせると脅す。でも、今回の様に政府が厳しく「ブラックマネー・ノー」を掲げれば、この様な事もしづらくなる。又は、普段の生活でいつ起こるか分からないテロ。インドのテロ活動はほとんどこのブラックマネー(違法現金取引)で武器の売買が行われて、今回の様に取り締まる事でちょっと普段の生活の安全が確保ができる訳です。或いは、隠れ資産をしっかり把握する事で透明性が出てくる。税収も増えるのでその分ちゃんとした国づくりに予算を回す事ができる。企業にとっても、個人にとっても、プラスな事は多いです。もし、駐在員でそこそこの期間インドに住まれ、文句だけ言って先を読めないのであれば言葉は厳しくて申し訳ないですが雇われている会社で働くのは失格だと思います。

2つ前のブログ記事のコメント欄で、僕が旅行会社をやっているのに旅行者の事は気にしないのか、旅行者は今大変だ、という書き込みがありました。ちょっとこの事に付いて触れたいと思います。

確かに、現在インドを旅行されている方はとても状況が厳しいと思います。弊紙廃止前にインドに到着し、特に田舎へ旅行するとなると一度に沢山の外貨をインドルピーへ変換されていると思います。その多くはきっと今は無効になったRs. 500とRs. 1,000紙幣。使えなくなっただけでは無く、空港での外貨へ戻すにもRs. 5,000しか両替する事ができません。現在もうちのご手配で旅行されているお客様もいらっしゃいますし、できる限り余ったルピーに関してはサポートをしていきたいと思っています。わざわざ近くの銀行へ行くにしても時間は掛かって観光する時間もできなくなるし、両替できてもRs. 4,000。並んでいる途中で「今日はおしまい」なんてのもあります。なので、旅行者に対してはもっと優しい政策を取るべきだったとは思います(例えば、観光ビザ保有者ならまだしばらくは旧弊は使えるようにする、等)。こういう点では、まだインドは途上国であると思います。

ただし、同時に旅行される方もその国の状況を理解・尊重される必要はあると思います。インドは日本の様に安定した平和な国では無く、日頃からテロの被害があり、無くならない汚職や集まるはずの税金が入らない。インドの一般国民もそれに疲れ果てている。インドに来られる旅行者の方々は強制的では無く、自ら選んでここに来られた。逆に、元々ここに住んでいる13億人は選択無しにインド人として生まれ、不可抗力の状況の中で生活をされている。旅行中に不都合があるのは残念ですが、インドが基本的に「ハプニングのある国」である事は承知の上旅行される心構えは必要だとは思いますし、もし気になるのであればインドを旅行先に選ばず、もっと安定した先進国が集まるヨーロッパや北米(まぁトランプが大統領になってこれからハプニングのある国になってもおかしくありませんがw)を検討された方が良いと思います。

正直、書き込みのコメントを読んでとても残念に思いました。

この様な急な決断力があるインド政府と当分は普段の生活が不便になっても犠牲を惜しまない多くのインド国民。これは日本人の多くも是非見習うべきでは無いでしょうか。

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話は変わって今日の自宅近所の「銀行通り」ここには6つぐらい銀行が隣同士で並びます。今日の列は昨日の長さの3倍ぐらい!!未だにICICIのATMは稼働しません。昨日預金出来なかった分を今日やろうと思いましたが、諦めました。。。今度は朝一で行こっと。ちなみに昨日優遇されていた女性は男女平等に今日は並んでいました。

インド 高額紙幣廃止:ICICI銀行の列
ICICI銀行の列
隣の銀行の列
隣の銀行の列
国営バローダ銀行の列
国営バローダ銀行の列

まだデリーは大都市なのでこれでもましだと思いますが、ラダック・レー在住の方が投稿されているラダははブログの記事を拝見しますとちょっとうんざりして政策に反対したくなるかもしれませんね。。。

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「インド高額紙幣廃止:何かを犠牲にしないと改革はできない」への6件のフィードバック

  1. インド在住日本人です。私はインドとインド人が大好きなのと日頃からpaytmやデビットカードを使うことが多く今回のことであまり困ることが無かったので当初から特に不満は無く、やっぱりインドは面白いな、なんて思っていました。ただ、ある方のブログで旅行者や出張者は大変だ、というご意見を読み、共感し、お気楽な自分を少しだけ反省もしました。でも今、すしまるさんのブログを読んで全くその通りだと感心しました。Facebookでネガティブなコメントを書かれた方達の気持ちもわかる気もしますが望んまぬ駐在であろうと、ここで仕事をさせてもらっているという謙虚な気持ちを忘れてはいけないし多くの日本人が持ち合わせていないインド人の対応力や許容範囲の広さ、アジャストする力を彼らから学んだ方がいいんじゃないか、私も出来る限り、そうしようと色々と考えさせられました。ありがとうございます!

  2. 貴重なご感想、ありがとうございます!確かに、選ばれずにしてインドに来る羽目になった出張者さんや駐在員の方々にとっては、そんなに共感しろと言っても無理な話ではありますね。実際私の父親もインド駐在で、毎晩イライラして家に帰ってきたのを見ながら育ったので仕事の効率面からしてストレスは多いと思います。ちょっとインド生活長くなるとインドをかばいたくなってしまい、過激になってしまいました(笑)。ただ、駐在として来る限りはやはり働かている会社がどのように将来インドでベストな形で成長するかな、というのは働かれている以上は考える必要があるかな、と生意気に思っているのも事実です。重ねまして、コメントありがとうございました。

  3. デリー駐在の家族です。私も全く同じではないですが似たような事を感じていました。個人的には、お金を貸してくれたり情報くれたり助けてもらいインドが少し好きになりました。旧紙幣もたまに使えたりする柔軟性も好きです。不便はあっても今のところ資産が目減りするわけではないので、デバリュエーションでなくてホッとしてます。実際に賄賂や脱税など諸々が改善されなければ庶民の苦労も水の泡ですけどね。

  4. 私も同意見です。

    日本は便利で大変住みやすい国で、それが当たり前と思ってますが、特殊な国だという事を理解しなければいけませんよね!

    現在の世界情勢は何があるかわかりません。私達日本人はもっと柔軟な考え方で生活しなければなりませんよね!
    たとえ、好んでインドに生活してなくても、インドの地で生活させて貰っている事、また企業であれば利益を出させて貰っていると言う事を忘れてはいけませんよね!

  5. コメントをありがとうございます。確かに、肝心の目的が改善されなければいけませんね。少なくても今回の行動で「政府は厳しいんだぞ」と強く表現を見せつける事はできたので、これから自由に不正ができない環境になったかとは思います。

  6. 温かいお言葉、ありがとうございます。インド人の柔軟性は見習うところはありますね(あまりやりすぎると適当にもなってしまいますがw)。日本人にとってインドは環境的に厳しいと思いますが、その中でもローカルを知る様にしていった方が損のない充実した人生が送れるはずです。

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