ヨハネスブルグでは4泊滞在しました。
今回の目的は中学時代の幼馴染の結婚式に参加するために訪れ、ついでに一人で観光もしました。友人がヨハネスブルグを観光するならレッドバスのツアーに参加するといいよ、と言われ、結婚式の翌日仕事で忙しかったのでここはお勧め通り一人で観光をする事に。
レッドバスは世界各地で展開している2階建てバスのツアーで、決まったルートがあり、そこで乗り降りして好きなだけ滞在して次のバスに乗る事ができる仕組みです。バスに乗るとイヤホンを渡され、走行中は歴史やストーリーを16か国の言語で聞く事ができ、日本語もあります。
ヨハネスブルグの主要観光スポットはいわゆる「ダウンタウン」と呼ばれる地区に集中し、ここは長年、「世界で一番治安の悪い場所」として悪名高かった地域です。アパルトヘイト時代栄えていたダウンタウンは人種差別政策撤退後、国内・国外から一斉に移民が流れ込み、ギャングの住処になって高層ビルは彼らによって不法占拠されてしまいました。そのため、新しい商業地区は北部のサントンという地域となり、ダウンタウンは無法状態になってしまったそうです。
しかし、ここ数年、ここダウンタウンは警察部隊を多く投入して治安改善に努め、今では逆にお洒落なストリートアートや芸術の中心地へと変化し、ウィークエンドマーケットなどが開催され活気は戻りつつあります。
レッドバスも最近できたアトラクションだと思われます。
まずは南アの高速通勤列車、ハウトレインで友人宅の最寄りの駅、ミッドラントからヨハネスブルグ中心街に近いローズバンクへ向かいます。時速160キロにもなり、ちょうど特急列車と新幹線の間ぐらいの速さで走るので巨大なヨハネスブルグ都市圏内の移動もすぐです。運賃も安く、駅構内や車内は清潔で警備もしっかりしているので、安心して利用できます。
ローズバンク駅からこのレッドバスはスタート。2階はオープンデッキになっているので景色を楽しめます。
まずはConstitution Hillという場所まで向かい、そこから市内中心部のバスへ乗換します。それまで、緑豊かな地域を走り、ヨハネスブルグは世界で最も緑が多い大都市だと言われている事が良く判ります。
ここから、悪名高きヒルブローという「世界一治安が悪かった地域」(今では改善されている様なので、過去形でいきます)へ向かって走ります。結構ワクワクしますよ、こうやって安心したバスに守られながら上から景色を眺めるのは。
確かに、中心部に入るとちょっとアジア的な活気に代わります。ここが恐らく本当に昔治安がヤバかったのかな、と思われる場所。
もともと市内中心部はアパルトヘイト時代経済の中心でもあったため、古い商業建物等が多く保存され、風情があります。高層ビルも多いので、ちょっとニューヨークを思い出させました。
今こうやって治安の悪化によって空いてしまった建物も、修復工事が進んでいます。至る所で塗装やビルの改築など行っているところを見るとこれから需要が高まってきそうな感じです。走っていて、全く治安が悪い様には見えませんでした。
そう言えば南アと言えば、ガンディーが人種差別を受けてそれが後にインドの独立運動に繋がった。ここヨハネスブルグもガンディーゆかりの地だそうだ。
さて、最初に興味のあった目的地はアフリカで一番高いビル、カールトンタワーの展望台へ行く事。ここも治安悪化によって空洞化した建物が現在では手を入れ、最近展望台が復活した様です。当初、バス停からここまで来るのに一人で歩いても問題無いか凄く不安だったけど、なんとレッドバスのスタッフが最初から最後までずっとエスコートしてくれました。ここで降りたのは自分一人だけだったので、付きっ切りで。展望台の入口は地下にあって全く案内板などなかったので、とても助かりました。
入口の切符売り場はクローズしたけど、No Problemでそのまま行っても良いとエスコート君。エレベーターは好き放題利用できるので、そのまま上へ案内されます。
降りたら。。。ヨハネスブルグが一望できる!馬鹿は高いところが好き、という様に、自分は展望台が大好き。
でも、この展望台。。。ほぼ貸切状態(汗)。まだ観光地としてしっかり知られていない様で、あとでヨハネスブルグ出身の友人に話したら「まさか上に行けるとは思わなかった!最近は入れるようになったばかりだろう」と驚かされました。エスコート君居てくれてホント嬉しい。ここでホールドアップされても可笑しくない様な場所でした(笑)。
景色はめちゃ良いです。ほら、こうやってダウンタウンの高層ビル群も上から見渡せる。
滞在時間は20分ぐらいで、エスコート君(名前はアルフレッド)がまたバス停まで見送ってくれました。彼のお蔭で、カメラをぶら下げても安心。
写真を見る限りでは全く治安の悪い地区には見えないんだけどね。
ちなみに、カールトンタワーの横にあるカールトンホテルはまだ空のままで営業が再開されていない。昔は栄えたんだろうな、と思える立派な高層ホテルでした。
次は、南アの民主化中心の場所でもあった、旧黒人居住区のソウェトへ向かいます。一旦ホテルで小型バスへ乗り換えます。
小型バスでソウェトへ。ヨハネスブルグに隣接する街で、雰囲気がガラリと変わる場所です。途中、世界トップ10に入る(?とガイドが説明)FNBスタジアムを通ります。
ソウェトに入ると、そこは典型的なイメージの「ザ・アフリカ」でした。
今でもここに住んでいる人たちはほぼ皆黒人。アパルトヘイト時代、黒人は指定の居住区でしか住むことが許されず、ここソウェトがその一つでした。ここから、ヨハネスブルグ等白人地域への出稼ぎが許せ、家政婦以外は一切白人地区に寝泊まりする事はできないほど人種差別は徹底していました。黒人は手帳を持たないと白人地域へ入れず、それが多くの黒人を苛立たせ、民主化運動が活発になる様になりました。マンデラ氏が育った家もここソウェトにあります。
黒人が国の政権力を持つ今、ソウェトでは富裕層、中流層、貧困層と現代南アを象徴するように様々な所得層が居ます。やはり貧困では今でも問題だし、都市と比べると大分雰囲気がガラリと変わるこの感じは、いくら黒人が力を持っていても経済力では白人は富を多く引き継いでいるのだな、というのが良く理解させられます。
ヘクター・ピーターソンの慰霊碑。これは、1976年に学生がアパルトヘイト時代にアフリカーンス語(白人の言語)で教育を強制されるようなった事に反対し、デモを行いました。まだ13歳だったヘクターはデモ隊に発砲した警察の弾丸によってこの付近で殺害されました。有名な写真が展示されています。
付近にはカラフルな壁アートがあります。
ソウェトは正直、アフリカらしさを味わうには良かったけど結構バスツアーで回った場所は一般な観光地でもあり、そんなに感動はありませんでした。2時間だけのツアーだったのもありますが。。。今度はもっとローカルな場所へ行ってみたいですね。マンデラの家も外から見ましたが、特に写真に収める必要が無いほどザ・観光地でした。
それよりもトヨタさんのショールームがあったのが驚き!購買力が上がったのでもちろんソウェトにあってもおかしく無いですね。
次へ向かったのはアパルトヘイト博物館。パンフレットでは2時間あった方が良い。。。と記載があったけど、あまりに見ごたえがあり、3時間居てもまだ半分しか終わる事しかできませんでした。
南アの人種差別の歴史はとても深いもので、単なる「白人対黒人」では無く、その政策に至るまでマイノリティーの白人がどうやってここで生き残れるかとしてそれが極限化したものがアパルトヘイトなのです。どの人も差別意識はあり、これは自分にもあるし日本人にだってある程度あると思う。そういう意味で、人種差別とは何なのかというのを深く考えさせられます。アパルトヘイトが終わったのは大きな歴史的第一歩であり、人種間の経済格差はあるものの誰でも平等の人権が与えられるようになったのが個人的に南アが好きな理由の一つでもあるかもしれません。アパルトヘイト時代の罪に対しては国自らが積極的に裁くようになり、過去の過ちへ対してしっかり向き合っている姿勢にも圧倒されます。
博物館入口は「白人」と「非白人」で分けられます。実際、コンピューターがランダムに検出したチケットに記載されたので入る様になっています。
ちなみに、アパルトヘイト時代は大まかに3つの人種グループに分かれ、白人、混血(カラード)、黒人に指定され、そこからさらに細かく分かれます(特にカラードの人達は)。アジア人は厄介な指定で、元々中国人はカラードに指定されたけど、アパルトヘイト時代も日本との貿易状況が良かったことから日本人は「名誉白人」に指定され、その後これが国際的に同じく孤立していた台湾人と韓国人にも延長されました。中国人と見分けがつかないとの理由で、中国人も最終的には名誉白人扱い。
政治的な権限は白人が握り、カラードやインド人もその内そこそこ発言力を得る様になりました。黒人は最後まで一切の政治的権限力は無し。
結局閉館時間でもまだ半分しか見ていないため、今度またリベンジしたいと思います。もう外は夕方。
友人宅へ戻ると、ステーキを用意してくれました。専用の巨大なグリルを持っていて、わざわざ薪を使用して焼いてくれたと。一般的な炭火焼とは違った美味しさがあるとの事で、労力かけて作ってくれました。友人妻はアフリカーンス式のポテトサラダを作ってくれ、コンデンスミルクをたっぷりするのが特徴だそう。新鮮なサラダがたっぷりと、赤々とした牛肉の美味さには最高に感動ものです。
ヤバい、見ているだけでヨダレが垂れる。。。インドで暫くまた食べれないので、たっぷり悔いの無い様に頂きました。
南ア。凄い個人的には魅力的なんですよ。恐らく、その背景には世界を縮小した様な感じで人間的。そして、厳しい格差の中の世界でもとてもフレンドリーでたくましく生きる。まだ将来的に可能性が高い。白人の多くは国外へ移住している人も増えていますが、友人(同じく白人)はまだ将来に希望を持って、アフリカ全体の発展を望みながら働いている人も居ます。そして、美味しい肉やワイン、美しい景色は独自の宝もの。
もし、すしまるブログのケープタウンとその周辺の写真ブログをまだ拝見していない方は是非必ず観てください!絶対に美しさに感動すると思います。
>ケープタウン写真ブログその①
>ケープタウン写真ブログその②
>ケープタウン周辺のワイナリー写真ブログ
全体的に、治安は改善されている様に思えます。将来的には、もっと安全になるのでは無いかと信じています。
「「魔」のヨハネスブルグ中心部と周辺を観光!」への2件のフィードバック
初めましてこんにちは。旅行が好きで以前ふらふらとこちらにたどり着いてからたまに覗かせて頂いています。アフリカ大陸はほとんど行ったことがなく、南アフリカも行きたいなと思っている場所の一つではあるのですがなかなか遠いことがネックになって行けていません。
今回南アフリカの内容を拝見して近い内に機会を見つけて行ってみたいなと再確認しました。またお邪魔します。
南アフリカの大都市はインフラ整備がしっかりされているので、ヨーロッパに居る感覚で旅行ができます。ただ、未だに治安は「良好」では無いため、夜の独り歩きは控える、日中でも人気のない場所へは行かない、など注意は必要です。これさえクリアをできればアフリカ旅行のスタートとしては最適な場所ですよ。