インド人との付き合いで頭を悩ますのが、食べ物。タブーとされるものが宗教や地域によって異なるので、日本から持参する際のお土産も含み、とても気を使います。
この記事では、主観的な部分も大きいですが、ざっと今までの経験から宗教別と地域別に食品のタブーレベルを表で纏めてみました。
また、ヒンドゥー教徒に関してはあまりにも地域によって状況が異なるため、こちらは別の表で更に細かく分析してみました。
<インド全体の宗教別タブー食比較>
インドには様々な宗教が存在しますが、その中でも普段の生活やビジネス業界で関わる方々達はざっと5つの宗教に分類できると思います。ムンバイに少数派で存在する、タタ財閥の一家が属するパルシー(ゾロアスター教徒)は今まで個人的にあまり接点が無かったので省いています。
乳製品 | 卵 | 鶏肉 | 豚肉 | 牛肉 | ヤギ肉= マトン |
酒 | |
ヒンドゥー教徒 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 3 | 4※B |
イスラーム教徒 | 5 | 5 | 5※A | × | 5※A | 5※A | 1 |
シク教徒 | 5 | 4 | 4 | 2 | 2 | 4 | 4※C |
ジャイナ教徒 | 5 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 4※B |
キリスト教徒 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 4※B |
×:絶対的なタブー、ほぼ皆拒絶反応レベル
1:基本NGだけど、一部の少数派にはOK
2:大多数が抵抗を感じる
3:半数・半数ぐらい
4:一般的だが、一部には抵抗ある
5:ほぼ皆抵抗なし
※A:基本イスラーム教の手法で裁いた肉の場合(ハラール)
※B:宗教的な制限は無いが、体質の問題
※C:宗教的な制限はあるが、あまり気にされていない
<シーフード>
シーフードがややこしい!デリーなどの内陸の土地では、伝統的に新鮮な魚介類が手に入らないため、大衆的では無いですが、魚や海老などはベジタリアンを除きあまり抵抗は無い様です。イカもカラマリと言って、お洒落なイメージ。貝やタコは抵抗がある場合が多いですが、宗教的なタブーはあまり聞きません。
海沿いの街(ムンバイやチェンナイ等)には住んだ事無いのですが、どうなんでしょう?興味があります。
<ヒンドゥー教徒地域別分析>
ヒンドゥー教徒の食タブーがこれまた地域によって全然違う!ざっと4つに分けましたが、この中でもまた細かく分かれます
北部:パンジャーブ州、ハリヤーナ州、デリー、UP州、ビハール州など
西部:ラージャスターン州、グジャラート州など
東部:ウェストベンガル州、オリッサ州、北東インド全域
南部:マハラーシュトラー州(正確には西部だけどここでは例外)、ゴア州、ケーララ州、カルナータカ州、タミルナドゥ州、AP州など
乳製品 | 卵 | 鶏肉 | 豚肉 | 牛肉 | ヤギ肉= マトン |
|
北部 | 5 | 3 | 2 | 1 | 1 | 2 |
西部 | 5 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 |
東部 | 5 | 5 | 5 | 5 | 4 | 5 |
南部 | 5 | 4 | 3 | 3 | 3 | 3 |
1:基本NGだけど、一部の少数派にはOK
2:大多数が抵抗を感じる
3:半数:半数ぐらい
4:一般的だが、一部には抵抗ある
5:ほぼ皆抵抗なし
西部と東部は両極端です。西部は砂漠型気候でとても夏が暑く、生物は腐りやすい事で衛生的な概念から肉や卵を口にしない人が多い。ラージャスターン州は、ベジタリアン人口が州の7〜8割に近いと言われている程。北部もこれに近い。
対照的な亜熱帯気候の東部。ヒンドゥー教徒でも、普通にビーフを食べられる人が多いです。インパールはヒンドゥー文化ですが、レストランのメニューに普通に「Beef」と記載があります。こちらではベジタリアンはかなり少数派。
南部はちょっと複雑。ケーララ州のヒンドゥー教徒はほぼノンベジで、大衆食堂でも「Beef Fry」が定番のメニューになっているぐらい。でも、お隣カルナータカ州は結構厳格なベジが多い。そのまたお隣AP州はポークカレーがあったりとばらつきがある。
<名前で相手の宗教を判断できる?>
一番簡単なのは、苗字が「Jain」とついている方々。その名の通り、ジャイナ教徒です。とても一般的な苗字でもあるので、この名を見かけたら、基本厳格なベジタリアン(卵も肉も口にしない)と思った方が良いでしょう。もちろん、例外もありますが。
男性はターバンを巻いている事で有名なシク教徒は「Singh」が多いですが、ヒンドゥー教徒でも同苗字が使用される事があります。
「Khan」は一般的なイスラーム教徒の苗字です。また、名前にZやQがつく事があれば、イスラーム教徒の可能性が高いです。これらの発音はアラビア語やペルシャ語由来だから。Zakhir、Shabaz、Zaid、Siddiqなど。宗教的にアルコールはタブーであり、これには日本の調味料を含めます。ゼリーとか菓子類に使用されているゼラチンは豚由来なので更にNG。お菓子とかお土産に渡す際には、一度原材料を確認してから。
クリスチャンは西洋人と同じ様に旧・新約聖書由来の名前が多いので判断しやすい。Thomas、David、Maryなど。
<相手の宗教を聞くのはタブーでは無い>
インドでは、一般的に相手の宗教を聞く事はタブーではありません(ただしカーストはNG)。もし気になれば、先に聞いておいた方が後が楽になる事があるでしょう。
<まとめ>
ヒンドゥー教徒以外の人達は基本食文化に一貫性がありますが、ヒンドゥー教徒だけは地域によってタブー概念が両極端。ここではっきりしているのは、砂漠の様な厳しい気候の場所ほどベジタリアン人口が多く、緑豊かな自然の恵みがある土地では何でも食べられているという事。そして皆共通しているのは乳製品は一般的である事(ベジタリアンにとって数少ないタンパク源でもあるので)。