何故日系航空会社のラウンジは世界一になれないか:検証と改善案

今まで様々な空港ラウンジを体験して、どうしても日系航空会社のラウンジは質が劣る部分が多いと思います。

JALとANAは機内では世界トップレベルの航空会社と断定できる程のクオリティーが実感できますが、何故ラウンジはしょぼいのでしょうか。

この記事では、自分が日系航空会社の経営者になった感覚で問題点と解決案を触れて行きます。

①上級会員(利用対象者)が多すぎる

何と言ってもこれに尽きます。

世界でも珍しい、年会費さえ継続すれば永久に上級会員を維持できるSFCとJGC制度。

これだと、会員入れ替えにおける代謝が発生しないので増える一方です。

ラウンジを拡張して数を増やしても利用者はどんどん増していくので更に広くしなくならければならない。

結果、混雑具合に歯止めが効かない時がある。

羽田空港T3ANAラウンジ内
羽田空港T3ANAラウンジ内

JALファーストクラスラウンジとANAスイートラウンジに関してはしっかりマイルを稼がない限り半永久的にステータスは維持はできませんが、それでも会員数はとても多く、あまりファーストクラスラウンジらしく無い混雑ぶりを伺える時があります。

成田空港JALファーストクラスラウンジ(改装前)
成田空港JALファーストクラスラウンジ(改装前)

②食事がしょぼい:炭水化物系多すぎ

これは特にビジネスクラスラウンジに両社とも共通します。

基本的に炭水化物だらけ。

肉とか魚はあっても唐揚げとかカロリーが高めのもの。

まずはJALサクララウンジのThe Diningメニューを拝見してみましょう(2023年)。

JALサクララウンジメニュー
JALサクララウンジメニュー

↑JALオリジナルのビーフカレーって、肉がごろごろ入っている訳でもなく一口サイズがあるぐらい。

丼ものの肉も薄切れが少し載っている程度。

唯一の魚であるフィッシュ&チップスも揚げた小さい魚が2枚あるぐらい。

残りはほぼ炭水化物です。

続いてANAラウンジ。

ANAはヌードルバーで有名ですが、基本的にメニューの違いは揚げ物が載っているかで後はほぼ麺。

ANAラウンジメニュー
ANAラウンジメニュー

ビュッフェメニューも炒飯や焼きそば、加工肉ソーセージや具がほぼ無いオリジナルチキンカレーなど、ジャンクフードに近いと言っても過言ではありません。

ANAに至っては、深夜出発便は長距離路線でさえビジネスクラスやファーストクラスでは離陸後にしっかりとした機内食が提供されないので、尚更ショックです。

辛うじて新鮮なサラダが食べれるのは嬉しいですけどね。

魅力が薄れたANAラウンジの食事
魅力が薄れたANAラウンジの食事

ファーストクラスラウンジになるともう少しバラエティーが豊かになり、JALに関しては握り寿司、ANAに至ってはオリジナルハンバーグセットをライブキッチンから頂く事ができますがそれでも他社のファーストクラスラウンジと比較すると自慢できるものでもありません。

JALファーストクラスラウンジの寿司
JALファーストクラスラウンジの寿司
ANAスイートラウンジのスイーツ
ANAスイートラウンジのスイーツ

③ラウンジ内がオフィスみたい

無理もありません。

ラウンジを利用している大多数は日本経済を支えるビジネスマン(お疲れ様です!)であり、出張利用が多く見かけるので決して優雅な雰囲気はありません。

その結果、ラウンジ内が機能的なデザインになってしまい、お洒落さよりも狭いスペースにどれだけ座席を効率よく詰められるか、が課題になってきます。

一列に座席が並ぶ羽田空港JAL国際線サクララウンジ
一列に座席が並ぶ羽田空港JAL国際線サクララウンジ
均等に座席が並ぶ成田空港国際線ANAラウンジ
均等に座席が並ぶ成田空港国際線ANAラウンジ

長所は充実したシャワー室

短所ばかり並べても偏ってしまうので、逆に日系ラウンジの良さも記載したいと思います。

個人的には、両社のラウンジシャワー室は世界トップレベルだと思います。

充実したアメニティーや室内の雰囲気はとても落ち着きます。

成田空港国際線JALサクララウンジシャワー室
成田空港国際線JALサクララウンジシャワー室
羽田空港国際線ANAラウンジシャワー室
羽田空港国際線ANAラウンジシャワー室

ただ、ラウンジが混雑している時は数時間待ちというのもあるので、あくまでゲットできたら、ですけどね。

ANAラウンジシャワー室の待ち時間
ANAラウンジシャワー室の待ち時間

さて、ここで日系ラウンジの質を向上させる解決案を提案したいと思います。

<改善案①:SFCとJGCの年会費を大幅に上げるか、上級会員用ラウンジとビジネス・ファーストクラス乗客用を分ける>

こんな事言って日本中の該当者にぶっ飛ばされそうですが、手っ取り早くラウンジの混雑具合を緩和させるには利用対象者を減らす事。

流石にこれを一気に実施するとなれば波紋を呼びそうなので、代案としてはこれらの上級会員用ラウンジ(エコノミー利用)と、ビジネスクラス・ファーストクラス乗客用のラウンジを分ける事。

この様な差別化はシンガポール航空、カタール航空、ユナイテッド航空等のラウンジで実施されており、それによってビジネスクラス以上の乗客はかなりレベルアップされたラウンジ体験ができます。

例えば、カタール航空のビジネスクラス乗客専用のアルモルジャーンラウンジではアラカルトダイニングや仮眠室が設けられたり、ユナイテッド航空でも同様にポラリスラウンジではレストラン形式の食事を召し上がる事が可能です。

カタール航空アルモルジャーンラウンジ:アラカルトのサーモン
カタール航空アルモルジャーンラウンジ:アラカルトのサーモン
カタール航空アルモルジャーンラウンジの仮眠室
カタール航空アルモルジャーンラウンジの仮眠室

逆に、ルフトハンザ航空の様に上級会員用ラウンジの方がビジネスクラス乗客専用よりも充実しているケースも稀にありますが、上級会員数が一方的に増えているパターンの日系航空会社にはあまり適していないかもしれません。

以下改善案②以降は、この①をベースにしなければ航空会社にとってかなりの財政的負担が生まれるかもしれません。

<改善案②:食事の品質をアップグレードする>

羽田のデルタ航空ラウンジ羽田成田のキャセイパシフィックラウンジを参考にすると良いです。

これらはエコノミー利用の上級会員も入室可能なビジネスクラスラウンジですが、JALやANAの同レベルラウンジと比較すると食事のクオリティーが遥かに高いです。

まず、チーズやハムはもっと本格的なものを;肉や魚のアイテムを増やしましょう!

プロセスチーズや加工肉ソーセージでは安っぽい!

羽田空港デルタ航空ラウンジの前菜
羽田空港デルタ航空ラウンジの前菜
成田空港キャセイラウンジの朝食
成田空港キャセイラウンジの朝食

↑成田空港のキャセイラウンジなんてビジネスクラスラウンジでスモークサーモンが提供されます!

ファーストクラスラウンジでは、本格レストランスタイルのアラカルトダイニングは必須でしょう。

ドバイ空港エミレーツファーストクラスラウンジの前菜
ドバイ空港エミレーツファーストクラスラウンジの前菜

<改善案③:ラウンジの雰囲気を良くさせる>

事務所らしい雰囲気から、5つ星ホテルのラウンジの様な配置へ。

こちらも、羽田のデルタ航空及びキャセイラウンジを参考にしてみましょう。

羽田空港デルタスカイクラブ内観
羽田空港デルタスカイクラブ内観

↑正直そこまでゆったりとした配置では無いけど、横にずらっと均等化されている日系ラウンジよりは落ち着く内装だと思います。

自宅のリビングルームの様な羽田空港キャセイラウンジ
自宅のリビングルームの様な羽田空港キャセイラウンジ

↑流石にプライバシーを好む日本人にこのオープン的なデザインを導入したらとは提案しませんが、観葉植物がありこの様な雰囲気を生み出すのも悪く無いでしょう。

<改善案④:簡易的な仮眠室を設ける>

今や日系航空会社は日本国籍よりも外国国籍の利用者が多くなっている時代。

単なる、成田や羽田は出発・目的地では無く、第三の経由地としての役割を担っている時代です。

特に人気なのは日本を経由して北米とアジアを結ぶ乗継客。

長旅のこの路線利用者に何よりも嬉しいのは、仮眠室。

個室にしてしまうと流石にコストが増すので(カタール航空やターキッシュエアラインズでは完全個室にしていますが)、簡易的なもので良いと思います。

例えば、ルフトハンザ航空のラウンジの様に。

ルフトハンザラウンジの仮眠室
ルフトハンザラウンジの仮眠室

実際、成田空港のJALサクララウンジでは完全個室型が2室用意されていますが、利用者が多いビジネスクラスラウンジでは非効率かもしれません(ファーストクラスラウンジに似合っていると思いますが)。

成田空港JALサクララウンジ仮眠室
成田空港JALサクララウンジ仮眠室

羽田空港のANAスイートラウンジには既に仮眠エリアが設けられていますが、これがANAラウンジにも設けられると良い需要があるでしょうね。

羽田空港国際線ANAスイートラウンジナップエリア
羽田空港国際線ANAスイートラウンジナップエリア※

※ANAホームページより引用

完璧なビジネスクラスラウンジならカタール航空のアル・モルジャーンラウンジが参考になる

今まで訪れた空港ラウンジで最も良かったビジネスクラスラウンジは天然ガス資源溢れるカタールにある、ドーハ空港のカタール航空アル・モルジャーンラウンジ。

特に、近年できたばかりのアル・モルジャーン・ガーデンラウンジは上記改善の全てが満たされていて、他社のファーストクラスラウンジよりも優れている点ばかりです。

上級会員でもエコノミークラスの利用者は対象外になります。

落ち着いたカタール航空アルモルジャーンラウンジ
落ち着いたカタール航空アルモルジャーンラウンジ

完璧なファーストクラスラウンジならスイス国際航空かルフトハンザ航空が参考になる

「ラウンジ」として訪れたベストなファーストクラスラウンジは、チューリッヒ空港にあるSWISSファーストラウンジ

ここには5つ星ホテルの様な立派なベッドとシャワー・トイレ付きの仮眠室が用意され、スイスの伝統料理をレストラン形式のフルコースで頂けたり、晴れた日にはアルプス山脈が一望できるテラス付き。

スイスファーストラウンジの仮眠室
スイスファーストラウンジの仮眠室
スイスファーストラウンジのフルコースメイン
スイスファーストラウンジのフルコースメイン

ルフトハンザに関してはフランクフルト空港にラウンジを飛び抜けてファーストクラス専用のターミナルを設け、チェックインから出国手続きを経て飛行機に乗るまでスタッフが案内。

ラウンジは様々な食事オプションがビュッフェ形式とアラカルト形式で楽しめます。

このターミナルのメリットは建物がこじんまりしているのでとにかく歩かない!

ほぼ全体がラウンジで、最後は飛行機まで直接専用の車で送迎してくれます。

フランクフルト空港ルフトハンザファーストクラス専用ターミナル
フランクフルト空港ルフトハンザファーストクラス専用ターミナル
リムジンで駐機場まで向かう
リムジンで駐機場まで向かう

これら2つのラウンジの重要ポイントはルフトハンザグループの最上級会員のエコノミークラス利用でも入室可能ですが、年間とんでもない数のフライトをビジネスクラス以上の上級クラスで利用しないと達成できないステータスなので一般人には不可能なレベル。

なので、良いラウンジであればある程、入室できるハードルを同時に上げていくことは必須になりますね。

まとめ

日系航空会社ラウンジの質向上にはまず上級会員数を減らすか、新たにビジネス・ファーストクラス乗客専用のラウンジを設ける事。そして、差別化をして後者の食事のクオリティーをレベルアップさせ、ラウンジの雰囲気ももっと落ち着いた様にさせる。これだけでも、大分世界トップレベルのラウンジを目指せるのでは無いか、と思います。

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「何故日系航空会社のラウンジは世界一になれないか:検証と改善案」への2件のフィードバック

  1. 昨日バンコクでJALとカタール航空のラウンジ両方を利用しました。
    カタールのラウンジはスタッフの愛想が良く、料理もアラカルトでオーダーでき、他社のファーストクラス並みの素晴らしさでした。
    香港のヌードルバーもよいですが、レベルが違いました。本家のドーハは行ったことがないですが、すごいのでしょうね。

    1. スワンナプーム空港のカタール航空ラウンジはかなり良いらしいですね。本家のラウンジにもアラカルトは楽しめますが、とても広いのでアウトステーションラウンジにはこじんまりとした居心地の良さがあるかもしれません。

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