前回その①でかなりボーアの立場を強調して書いてしまったかもしれませんが、アパルトヘイト政策及びその前から始まった人種差別対策には個人的に反対だし非人道的だったと強く思います。アパルトヘイトが終了したのは歴史的に大きな前進だと思いますし、それがあったから僕も個人的に南アフリカが好きになりましたし、白人とも仲良くできています。これがアパルトヘイト時代だったら遊びに行っていないと思いますし、白人の友人とも距離を置かざるを得なかったでしょう。
気になるのは、未だに南アと言うとアパルトヘイトがあるイメージが強い事。そして南アの白人へ対してネガティブな印象が一般的にある事。
もうアパルトヘイトが終わって26年も経過していますし、僕より若い世代はアパルトヘイトを知りません。現在の南アではまだ黒人政治家による白人(特にボーア)批判が絶えませんが、もう現代では政治の権力は黒人にあるのです。好き勝手やろうと思えばできます(実際、現大統領はかなりの反白人主義で何度も白人農家を追放する事を遠回しに発言しています)。
これって正に韓国や中国対日本の外交に似ていると思います。韓国とは既に60年代に日韓条約で日本植民地時代の傷を賠償し、韓国側は以後すべての賠償請求を放棄したはずですが未だに100年前の歴史を振り返って日本批判が絶えず、賠償請求を続けています。日本はいつまで反省すれば良いのでしょうか。
この背景にはやはり日本が経済的に強く、豊かである事がポイントでしょう。
南アの白人が責められるのはアパルトヘイト時代の恩恵で今でも多くの富を引き継ぎ、黒人の多くは未だタウンシップに住み、トイレも無い小さな小屋に大家族で住んでいる事。人種別の経済格差があるのは明らかです。でもどう国を動かしていくかは彼ら黒人の手にあります。
既にBEE(黒人地位回復政策でBlack Economic Empowermentの略)は実行され、就職は黒人が優先され、企業に対しては黒人を雇わないと高い税金が課されるシステムになっています。
また、白人の一部はホームレス状態になり、都市部には白人のタウンシップも出てきています。政治的権限が無いため、同じ状態で生きる黒人よりも生きる希望は薄く、しかも黒人優遇社会となったので貧困に陥ってしまった白人は未来がかなり絶望的です。
人種間で異なる貧富の格差は単なるアパルトヘイトが残した傷だけでは無く、政治腐敗にも責任があります。特に現大統領は人種問わず多くの国民に不人気で、税金を自分と自分の家族のために多く着服されています。それに反発したインド系の財務大臣ゴルダーン氏が2017年3月末に解任され、通貨のランドが暴落しました。そしてその直後ムーディーズなどの格付け機関は南アをジャンクへ降格してしまい、独裁国家になりつつあると南アの国民は懸念しています。同じANC内でもズーマ大統領への反発は高く、党内も意見がかなり分かれてしまっている状況です。
既に、南アではアパルトヘイト終了後にThe Truth and Reconciliation Commissionと言う委員会を作り上げ、アパルトヘイト時代に起こった人権侵害を正義に持ってくる活動をしています。また、犠牲者へ賠償金を提供するためにThe President Fundと言う基金を2005年に政府が立ち上げ、現在では11億ランド(約90億円)相当が集められていますが、腐敗でまた多くの犠牲者に回っていないのが現状です。
黒人政権になった現在、改革をしたければいつでもできるけど腐敗や汚職のせいで貧困が無くならない。白人を責め続けても何も始まらない。これは権力者が変えていくべき問題でしょう。