たまには、筆者が人生の大半を過ごしたインドの航空事情について記載したいと思います。
エアインディアとインディゴを始め、インドの国内線は様々なエアラインで百回以上に及び乗っているので少しは参考になるかもしれません。
結論から言うと、インディゴの方が一般的に信頼感を得ていますが、LCCのため追加サービスは全て有料;エアインディアはフルサービスキャリアのため機内食が無料で提供されマイルを得る事ができますが古い保有機材も多く、評判は民営化して以来回復しつつあります。
それぞれのメリットとデメリットを説明する前に、まずは日本ではあまり馴染みの無いインディゴの紹介をさせて下さい。
インディゴはアジア最大級の航空会社;女性パイロットが多い
日本に未就航のインドに拠点を置くLCC、インディゴですが、実は乗客数で見ると中国を除いたアジア最大の航空会社(2023年時点)なのです。
保有機材は2024年9月時点で390機あり、全て単通路機材のエアバスA320ファミリーか、小型のATR機材のため、国際線を含めてインド国内とその周辺国に路線は集中しています。
インディゴは世界的にも女性のパイロット率が14%と、平均の7〜9%より高く、筆者も今まで何度か女性機長によるアナウンスを機内で聞いています。
インディゴはJALとコードシェア開始
2024年の冬ダイヤから、インド国内線においてJALが今まで提携していたビスタラ航空に代わり、インディゴと提携する事になりました。
インディゴはLCCなので、フルサービスの象徴でもあるJALにとっては結構大胆な動きではありますが、今までにインディゴはターキッシュエアラインズやアメリカン航空等、既に多くのフルサービスキャリアと提携しているので珍しい事ではありません。
長年JALと提携していたタタ財閥とシンガポール航空傘下のビスタラ航空は2024年11月にエアインディアと完全統合となり、ブランド自体は消滅したので、スターアライアンスであるエアインディアとANAのコードシェアに対抗できる唯一の措置でしょう。
インディゴは昔から日本人駐在員も多く利用する航空会社
筆者がインドで旅行会社を運営した2010年代はインディゴが急成長を展開している時期で、LCCでありながら定時率はインドナンバーワンの航空会社として評判があったため、ビジネスマンによく利用されていました。
当時、インドには悪名高き国営のエアインディアはインド人でも不安!と言っていたぐらい、確かに筆者が乗った際も10回以上連続して30分以上の遅延があったりとウンザリでした(その後大分改善しましたが)。
もう一つ、ANAと提携していたジェットエアウェイズというフルサービスの航空会社があり、こちらも悪くなかったのですが重なる債務超過で2010年代後半に完全に運行停止状態。
スパイスジェットと言うLCCも存在していましたが、こちらも経営破綻。
インドの航空業界は価格競争が激しすぎて、弱者はすぐ潰れる仕組みで、インディゴだけが唯一毎年、収益が黒字だった航空会社でした。
結局最後まで生き残ったエアインディアでさえ、2021年8月時点での負債額が6,000億ルピー(約1兆円!!!)で、国でさえ手放したかったこの国営航空は最終的にインド最大の財閥であるタタグループによって買収されました。
2022年から本格的に民営化された後に筆者がエアインディアに搭乗した際には、見違える程サービスに変化があったので、それも触れたいと思います。
では、本題に参りましょう。
付加価値であればエアインディアの方が上
インド国内線ですが、基本運賃設定はフルサービスのエアインディアも、LCCのインディゴもそこまで変わりません。
でも、エアインディアの方が無料の大抵2種類から選べる機内食やドリンク(水・紅茶・コーヒーのみですが)が提供され、マイルも貯める事ができるし(運賃クラスによりますが)、スターアライアンス上級会員であればラウンジを利用する事だってできます。
特に機内食においては、ムンバイ⇄デリーの様なドル箱路線ではたった2時間未満のフライトであっても、エコノミークラスでも国際線並みクオリティーです。
対するインディゴは、基本全て有料ですが、これらを含めたパッケージがかなり安価で事前に航空運賃に足す事ができます。
相対的には、エアインディアのコスパが高い様に思えます。
国際線との乗り継ぎ時に要注意:インディゴはターミナルが離れている場合がある
LCCのためか、インディゴは主要空港では古い方のターミナルから発着しがちです(国内線の場合)。
例えば、デリーではごちゃごちゃした第1か第2ターミナル(エアインディアはJALと同じ第3ターミナル発着)。
ベンガルールでは、古い第1ターミナル(エアインディアはJALと同じ第2ターミナル発着)。
ムンバイでは、第1ターミナル発着でこちらは国際線及びエアインディア国内線が利用する第2ターミナルから車で移動だけで15分ぐらいかかってしまうので、乗り継ぎが発生する際にはちょい面倒くさいです。
その点、エアインディアは便利ですね。
エアインディアには古い機材が多く存在する;インディゴは統一されている
エアインディアの弱点と言えば、年季の入った古い機材が存在する事。
特にA321機は要注意です。
積極的に導入されているA320はまだ良いですけどね。
その反面、インディゴはどの座席も統一された感覚で、古い機材であってもそもそものシートがシンプルなのでそこまで老朽化は目立っていません。
今まで数十回乗ったインディゴの中で、機内のメンテ状況や座席でヤバいな、と思った事が無いのでそこは強みでしょう。
エアインディアは結構「ぼろっ」と叫びたかった事が何度かありますが(笑)。
LCCなのに広い?座席の広さはエアインディアの方が狭い!?
エアインディアのもう一つの弱点が、積極的に導入している新型A320neoのエコノミークラスシートピッチ。
なんと業界最悪レベルの28〜29インチ!
そしてLCCなのにインディゴは30インチと余裕があります。
エアインディアでも、古い機材が最大32インチと広くなるので、実は新しい機材の方が足元はかなり限られるでしょう。
28インチがどれだけ狭いか、過去のこの記事に写真で解説しながら紹介しています。
まぁ、フルサービスで色々な付加価値を無料で提供しているので、その分座席が狭くなっても仕方無いかもしれません。
インディゴの成功の秘訣?遊び心豊か
エアインディアは元々国営だった航空会社だった事もあり、ちょいお堅いイメージがまだ残っています。
インディゴは結構文字から連想させるジョークの様な記載が至るところにあり、面白いです。
例えば、サンドイッチのパッケージに頭を使わせるような記載をしたり、有料のナッツの缶詰には「nut case」と書かれ、これ英語では「頭のおかしい人」と言う表現でもあります。
エアインディアの乗務員のサービスはかなり良い方向へ変化した
エアインディアと言えば、国営の時は迫力のある大きな&がさつなおばちゃんクルーが沢山居た事が有名でしたが、残念ながら(?)民営化とともに思いっきり変わりました。
若いクルーが増え、エコノミークラスであっても個々の乗客に丁寧に接客する様になり、結構見た目重視になってきています。
例えば、エコノミークラスの機内食で乗客にオプションを伝える際、国営時代であれば
「veg or non-veg?」
と聞かれるだけでしたが、2022年に民営化直後に乗った際には、
「vegetarian panner with fried rice or chicken masala with pulao rice?」ともっと細かく乗客にオプションを聞いていました。
その時の印象が、同じタタ財閥が運営するラグジュアリーホテル系列である、タージホテルズのプロ意識高い従業員と遜色ないな、と感じました。
定時率に関してはエアインディアはかなり意識する様になった
2016年ぐらいまでは本気で個人的な体験から遅延の方が多かったエアインディアですが、それ以降は特に大幅な遅れは体験していません。
2022年にタタグループによる民営化が本格的になってからは搭乗時間でさえ超早くなり(なんと出発1時間前!)、大型機材でも無いのに何故??と思うぐらい、定時率に気を配っている印象です。
ここはインディゴもエアインディアも頑張っていると思います。
まとめ
スタアラゴールド会員であれば、エアインディア利用がお得でしょう(筆者もその恩恵のためにエアインディアの方を遥かに多く利用していました)。以前からインディゴは確かに安定した安心感はありますが、民営化されたエアインディアもかなりサービス面で変化が見えるので、どちらも良いと思います。乗り継ぎの際にターミナル移動になりやすい件は、インディゴの大きなデメリットでしょう。